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ガスバリア入門講座 基礎編3

ガス透過の基礎 1)

紙はセルロースの繊維が絡み合って出来ているので、多数の孔があります。また、アルミホイルをクシャクシャと手でもんだ後、広げて光にかざすと夜空の星のように多数の小さな孔(ピンホール)が空きます。このような、小さな孔を通してガスが透過していく現象を毛細管流れ機構といいます。ガスが孔の空いているものを通っていくのは比較的理解しやすことでしょう。

ガスの流れる量は孔の大きさの4乗に比例し、孔の数、フィルムの両側の圧力差に比例し、ガスの粘度、フィルムの厚さに反比例します。このように書くと難解なように思えますが、蛇口がついたタンクを思い浮かべてください(図3-1)。このタンクから水を流すとき、蛇口が大きいほど、また蛇口がたくさんあるほど大量の水が流れます。蛇口の大きさが孔の大きさ、蛇口の数が孔の数に対応しています。タンクにたくさん水が入っているとたくさん水は流れますが、タンクの水が少ないときは、流れる水の量は少なくなります。この水の量に対応するのがフィルムの両側の圧力差になります。水の代わりに蜂蜜のような粘っこいものを入れると、流れにくくなることはみなさんの経験からも理解されるでしょう。

図3-1 いろいろな場合の中身の出る量

②や③では水の出る量は①に比べて多い。しかし、④では水の出る量は少なくなる。
また、⑤のように水の代わりに蜂蜜を入れると出てくる蜂蜜の量は少なくなる。

ゼリーのカップやマヨネーズのボトル、歯磨きチューブなど包装材料にはプラスチックが使われています。このプラスチックには一見して孔が空いていません。このように、一見して孔が空いていないものでもガスは透過していきます。このような孔の空いていないものをガスが透過していく機構を活性化拡散流れ機構といい、現在、プラスチックのガス透過の中心的な理論です。活性化拡散流れ機構に従うガス透過はプラスチックの種類や温度,湿度などに影響されます。

活性化拡散流れ機構によるガス透過を身近に見ることができます。ゴム風船を空気で膨らました後、時間が経つと小さく萎んでしまったという経験をお持ちでしょう(図3-2)。この現象は、ゴム風船内の空気が風船のゴムを通して、外へと透過していくためです。

図3-2 ゴム風船の経時的な変化

本シリーズでは、活性化拡散流れ機構を解説し、ガス透過に及ぼすプラスチックの種類やその構造、さらには、温度や湿度によって何故ガス透過性が変化するのかを順次説明して行きます。

次回は、活性化拡散流れ機構の解説を予定しています。

参考文献
1) ガスバリア性・保香性包装材料の新展開,東レリサーチセンター 発行,1997

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