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ソリューション

ガスバリア入門講座 中級編1

パーマコール

高分子を構成する主鎖や側鎖の構造は様々なものがあります。これらの構造を変えることにより多種多様な高分子材料を作り出すことができます。

ところが、このようにして作り出された高分子材料の物性値を測定するのも大変です。逆に、ある目的物性を発現させるためにはどのような分子構造が良いかを考えなければならないこともあるでしょう。このような時に、高分子の分子構造から物性値の推定ができればどれほど便利なことでしょう。

D. W. Van Krevelen1) は”Properties of polymers”に於いて、高分子の分子構造から密度など様々な物性値を計算する方法(原子団寄与法)を述べています。

には原子団寄与法による物性値の計算プログラムがアップロードされていますので、利用されてみてはどうでしょう。
気体の透過性においても、このような原子団寄与法による推定ができれば大変助かります。
Salame2-4)は凝集エネルギー密度と自由体積分率からポリマーの構成単位(ポリマー主鎖や側鎖)に固有値(パーマコール値)を算出し、ポリマーの構造からガス透過度を推定しています。

Salameによると、ガス透過度(P)との高分子のパーマコール値()との関係はP=A exp(-s) -(1)です。高分子のパーマコール値は高分子を構成している主鎖や側鎖のパーマコール値()を加算したものを原子団の総数で割ったものです。即ち、= /  -(2)です。が大きいほどガスバリア性に優れます。また、A,sは気体の種類によって決まる定数です。A,sを表1-1にまとめておきます。また、表1-2には骨格セグメントおよび側鎖のパーマコールを示します。

結晶性高分子のパーマコール値(c)は非晶状態のパーマコール値()と非晶の体積分率(a)と c= − 18 ln a -3の関係で表されます。

非晶の体積分率が0.4のナイロン6の乾燥状態でのパーマコール値を計算すると、

= 384 / 6
  = 64
c = 64 − 18 ln 0.4
  = 80

となります。

表1-1 パーマコール式のAとsの値(25℃)
気体 A s
cc cm

cm2 sec cmHg
cc mil

100in2 day atm
O2 5.0×10-9 8350 0.112
N2 2.0×10-9 3340 0.120
H2O 3.2×10-9 53400 0.122
表1-3 ナイロン6のの計算例
  Z
CH2 5 15 75
CO - NH 1 309 309
6   384
表1-2 非晶状態,非配向状態における各ポリマーの原子団のパーマコール値
Main Chain Side Groups
-146 15
15 -1
0 0
-33 108
60 255(day)
100(wet)2)
60 50
-74 1903)
70(day) 85
102    
24    
309(day)
260(wet)1)
   

1) この値は非晶性ポリアミドの値である。
  結晶性ポリマーでアミド基含有量が35%以下の場合、wet状態での値は280である。
2) ヒドロキシル基含有量60%以下の結晶ポリマーのwet状態でのi値は150である。
3) コポリマーにおいては-CN基の双極子結合力が低下するのでi値は低くなる。

次回は多層フィルムの酸素透過係数の計算方法について述べます。

参考文献
1) D. W. Van Krevelen, Properties of polymers, ELSEVIER, ISBN 0-444-88160-3
2) M Salame, Polym. Eng. Sci., 26, 1543 (1986)
3) ガスバリア性・保香性包装材料の新展開,東レリサーチセンター 発行,1997
4) Plastic Film Technology, Volume One, TECHNOMIC PUBLISHING CO., INC., page132 (1989)

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