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ガスバリア入門講座 基礎編4

活性化拡散流れ機構 1)

前回話したゴム風船の空気が抜けていく原因は活性化拡散機構による気体の透過であると述べました。今回はこの活性化拡散機構について詳しく述べていきます。

活性化拡散機構の説明に当たって、図4-1の上の図ようなふたつの部屋がフィルムによって仕切られているモデルを考えます。このモデルでは左側の部屋の圧力が高いとします。このとき、ガスは圧力が高い方から低い方へと流れていきます。

図4-1 気体透過の模式図

図4-1の下の図はフィルムの部分を拡大したものです。気体の透過は以下のような過程で起こります。先ず、気体分子は圧力が高い側のフィルム表面に凝縮し、その後、気体分子はフィルム内部に溶解します。フィルムに溶解する気体の濃度は気体の圧力に比例します。

溶解した気体分子は濃度勾配が駆動力となって濃度の低い方へ拡散していきます。フィルムの反対側に達した分子はフィルム表面から脱着していきます。活性化拡散機構によるガス透過は溶解→拡散→脱着の3つの過程よりなります。ガスを通しやすいプラスチックや通しにくいプラスチックがあるのは、溶解や拡散の難易がガスやプラスチックの種類にとって異なるためです。

では次に、拡散過程についてもう少し詳しく見ていきましょう。そのためにはプラスチックの構造についての知識が必要になります。

水分子は酸素原子1個と水素原子2個から、酸素分子は酸素原子2個からなっています。このように大部分の物質は原子が結合した分子からできています。エチレンガスは炭素原子2個と水素原子4個から構成されている分子です。このエチレン分子を反応によって何百個と長く繋げることができます。こうするとポリエチレンといわれる鎖のような長く大きな分子を作ることができます。このとき、エチレンのように元になる物質のことを単量体またはモノマーと言います。できあがった大きな分子のことを高分子といい、プラスチックは高分子から出来ています。

図4-2 いろいろな分子

図4-3(a)はプラスチックフィルム内部を拡大したときの模式図を示しています。長い分子を線で表すと、プラスチックの内部は長い分子が絡み合ったり、または規則的に並んだりしています。図中の直方体は分子が規則的に並んだ結晶を表しています。それ以外の部分は非晶といいます。大部分の高分子では、結晶領域中をガスは透過せず、非晶部分だけを通過しています。

図4-3(b)は非晶部分を拡大したものです。赤丸が気体分子であり、白い円柱状のものが高分子鎖です。高分子鎖の熱運動により小さな間隙ができます。気体分子はこの間隙を押し広げるように拡散していきます2)。

図4-3 プラスチックフィルムの内部構造と気体分子の拡散の模式図

次回は高分子の種類と気体透過係数について述べる予定です。

参考文献
1) ガスバリア性・保香性包装材料の新展開,東レリサーチセンター 発行(1997)
2) 高分子と水,共立出版(1995)

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